患者様へ
本ページは、医学生・研修医を含む医療関係者向けの内容となっております。
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診療・研究の紹介
Ⅰ.消化管疾患

消化管診療は口から肛門に至る広い範囲が対象となります。診断・治療の対象は,食道、胃、小腸、大腸と多臓器に渡り、診療する疾患も胃炎や潰瘍などの良性疾患から悪性腫瘍、炎症性腸疾患や機能性胃腸症まで幅広い疾患を扱います。また吐血や下血などの際に行う緊急内視鏡検査は救急医療において重要な役割を担っています。

1.診療と研究について

当科では多くの内視鏡検査、治療を行っております。内視鏡検査は上部消化管内視鏡検査や下部消化管内視鏡検査のほかカプセル内視鏡やダブルバルーン小腸内視鏡による小腸検査なども精力的に行っています。内視鏡診断、治療の技術は近年格段に進化しており、当科では咽頭・食道・胃・大腸の内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)や粘膜切除(EMR)等はもちろんのこと、大学病院ならではの困難症例に対しても様々な方法を模索・駆使して治療を行っています。
新規性のある治療や示唆に富む症例については学会や論文発表し、得られた知見を一般に広めるように努めています。進行癌に対する化学療法についても積極的に取り組んでおり、多くの臨床試験を行っています。

消化管がんは早期発見ができれば、内視鏡治療で低侵襲に根治も可能な疾患です。がんで大きな手術を受ける方、がんで亡くなる方を一人でも減したいという切なる願いを持って、内視鏡診断・治療のスキル向上と新しい診断・治療法の開発を目指して日々の診療・研究に取り組んでおります。


大腸腫瘍に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)



Endoscopic submucosal dissection through a gastrostomy for early gastric cancer in patients with pharyngeal stenosis
Kitamura S, Muguruma N, Okamoto K, Okada Y, Kimura T,Miyamoto H, Takayama T
Gastrointest Endosc,2014;79(2):206-7



Endoscopic submucosal dissection for early gastric cancer using a cross-counter technique
Okamoto K, Okamura S, Muguruma N, Kitamura S, Kimura T, Imoto Y, Miyamoto H, Okahisa T, Takayama T
Surg Endosc, 2012;26:3676-3681
2. 臨床研究・基礎研究について

消化器癌の診断,治療の新規開発ならびに消化器疾患の病態解明を目的として臨床研究とともに基礎研究も行っています。

・癌やポリープをターゲットとした内視鏡分子イメージング
・大腸癌発癌における大腸の微小病変(ACF)の役割を調べる研究
・大腸癌に対するChemoprevention
・癌の浸潤や抗癌剤耐性に関わる分子マーカーの探索研究


内視鏡分子イメージング
3.今後,消化器内科医,内視鏡専門医を目指す皆さんへ

当科では熟練した内視鏡指導医の下、専門医を目指す多くの若いDr.が日々研鑽に励んでいます。内視鏡診断能の向上には病理の視点から自らの診断を省みて、次の症例にフィードバックしていくことの繰り返しが重要であり、そのような環境下で学ぶことが診断を学ぶ上で王道と考えます。当科では学びたい思う人にとって少しでもスキルアップの手助けになるよう指導しており、内視鏡カンファレンスや、動物モデルやシミュレータを使ったハンズオンセミナー、ライブデモなどを行っています。
昨今では多くの女性Endoscopistも誕生しております。男女問わず、内視鏡診療・消化器診療・癌治療に興味のある方が当科で一緒に働いていただければうれしく思います。

Ⅱ.肝疾患
1. 診療

我々は、外来では主に肝炎の診断と治療、入院では肝臓がんの治療を行っています。肝臓がんの原因として最も多いウイルス肝炎に対しては、インターフェロン治療や核酸アナログ製剤などの抗ウイルス治療を積極的に行っており、1人でも多くの患者さんが、肝硬変や肝がんの発症を予防できるよう努力しています。また、最近増加傾向にある非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に対しても早期発見、治療を行っています。
肝臓がんに対しては診断、治療全般を行っており、肝細胞癌に対してはラジオ波焼灼療法、血管造影を用いた肝動脈塞栓術、進行肝癌に対する抗癌剤や放射線を駆使した治療を行っています。最近では大腸癌肝転移をはじめとする転移性肝癌に対してもラジオ波焼灼療法や肝動注化学療法を行っており、治療成績の向上に努めています。当院には最先端の医療機器が備わっており、県内から多くの患者さんが治療を受けに来られます。
肝硬変の合併症に対しても、積極的に治療を行っています。食道静脈瘤に対しては内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)や内視鏡的静脈瘤硬化療法(EIS)、IVRではバルーン下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)などを行っています。また、門脈圧亢進症や血小板低下症例には部分的脾動脈塞栓術(PSE)を行っています。

肝臓は、人体の生命維持に必要不可欠な臓器であり、また他の臓器との関わりが深く、肝疾患を診療することは、全身管理ができることにつながります。一方、肝疾患の検査、治療には多くの手技があり、バラエティに富んだ診療現場になっています。

2. 研究

基礎研究、臨床研究ともに、肝炎、肝癌領域に対して幅広く行っています。肝炎領域ではC型肝炎と脂質異常に関する研究やB型肝炎における発癌機序の解明、 また、肝癌領域では、肝細胞癌におけるバイオマーカーの探索、抗癌剤の耐性獲得の機序の解明などを主テーマとし、肝癌細胞株や,動物モデルを用いて行っています。
臨床試験では,今後,効果が期待できる薬を積極的に治験登録し,一人でも多くの患者さんが恩恵を受けられるよう努めています。

Ⅲ.胆・膵疾患
1. 診療の内容

(1)超音波内視鏡(ラジアル型、コンベックス型)を用いた胆膵疾患の診断


(2)膵腫瘍、リンパ節腫大、消化管粘膜下腫瘍に対するEUS-FNA
 (超音波内視鏡下吸引針生検)を用いた組織診断


(3)EUS-FNAを用いた仮性膵嚢胞ドレナージ術

(4)ERCPを用いた胆膵疾患の診断
  (胆汁・膵液細胞診、胆管・膵管ブラッシング、胆管生検、IDUS)


(5)総胆管結石に対する結石除去術
 (EST、EPBD、機械式結石破砕術、ラージバルーン)


(6)閉塞性黄疸に対する内視鏡的減黄術
(ENBD、プラスチックステント・メタリックステント留置術)


(7)胆嚢炎に対するENGBD

(8)膵管狭窄、膵石に対する膵管ドレナージ術

(9)術後腸管におけるダブルバルーン内視鏡を用いた胆膵疾患の診断治療

(10)消化管狭窄に対するステント留置術

2. 基礎研究

(1)研究内容
膵がんは画像診断の進歩がみられた今日でも、診断時には約80%の症例が切除不能な進行した状態です。そのような症例の中で遠隔転移のない局所進行例については、従来化学放射線療法が標準治療として位置づけられてきましたが、ゲムシタビン単独治療が生存期間において化学放射線療法を上回ったことが報告されました。また、遠隔転移のある症例でも従来よりゲムシタビン単独治療が標準治療とされており、現在では切除不能な膵癌に対し、ゲムシタビン単独治療が標準治療とされています。しかしながら、ゲムシタビン単独治療を受けられた患者さんの間で、治療効果に差を認めているのが現状です。
そこで膵がん組織のmicroRNAを解析しゲムシタビンの効果発現の関連マーカーを開発すること、および、治療効果の差を規定しているmicroRNAを同定することを目的として、以下の方法にて研究を行っています。
超音波内視鏡(胃カメラに超音波がついたもの)を使用し、病変部を超音波画像で確認しながらカメラの先端より針を出し病変部の穿刺を行います(超音波内視鏡下穿刺術:EUS-FNAと呼ばれます)。穿刺により病変部の組織を採取し、その組織からmicroRNAを含むRNAを抽出し、マイクロアレイにて解析します。使用する組織は通常診療内で診断目的に採取された検体の残組織を使用しています。

(2)主要な研究テーマ
・膵がんに対するゲムシタビンの効果発現の関連マーカーの開発
・膵がん患者の治療効果の差を規定するmicroRNAの同定

3. 臨床研究

研究課題:切除不能進行膵癌に対するirinotecan、oxaliplatin及びS-1併用療法(SOXIRI)の第I相試験 および第II相試験
概要:膵がんの治療方法には病期(病変の進行具合)に従っていろいろありますが、切除不能な病変に対しては抗がん剤の治療(化学療法)が行われます。 膵がんの治療方法には病期(病変の進行具合)に従っていろいろありますが、切除不能な病変に対しては抗がん剤の治療(化学療法)が行われます。
がんの化学療法では、多くの場合、効き方の違う薬を組み合わせて使うことがより良い治療方法と考えられていますが、まだどの組み合わせによる治療法が最善かは明らかにされていません。最近の報告では、膵がんの治療法としてゲムシタビン、5-FU、イリノテカン、オキサリプラチン、S-1等の抗がん剤の有効性が報告されています。また最近では膵がんに対し、5-FU、ロイコボリン、イリノテカン、オキサリプラチンの併用療法(FOLFIRINOX)の高い奏功率が報告されています。しかしこの併用療法では、5-FUの約2日間(46時間)に渡る点滴投与が必要であり、治療にあたりCVポート増設の必要性が出てきます。
そこでこの臨床試験では、FORFIRINOXの5-FU、ロイコボリンを経口の抗がん剤であるS-1に変更したイリノテカン、オキサリプラチン、S-1の3剤併用療法 (SOXIRI)での忍容性および有効性を調べることが主な目的です。この治療法では5-FUの点滴投与が必要ではないので、CVポートの増設が必須ではなくなります。
薬の投与法は以下のように行います。

投薬スケジュール